豆知識
桑
日本の温帯から暖帯の山野に自生し、木材としての蓄積は極めて少なく貴重であり  大径木は最近ではほとんど見られない。桑は優良な環孔材で辺材と心材の区別が  明瞭で辺材は帯黄白色、心材は暗黄褐色で黄色味がかっている。また、木の皮と  辺材との間、いわゆる皮の裏を見るときれいな濃紫色がみられ、これによりアメリカ桑  ・中国桑と日本の桑が区別でき、日本の桑を本桑と呼ぶこともある。  材の色調と木理は重厚の感じがあり、材質が良好なため装飾材として賞用され、建築  装飾材としては床柱・床廻りの材に古くから珍重されてきた。また、目が細かく材が  上品で美しいことから、たんす・鏡台・角火鉢・針箱等に用いられ、女性の嫁入り道具  とされることが多かった。貴重な材だけに小さな端材も細工物に用いられ、盆・茶托・  なつめ等に加工される。
濃紫色
欅(けやき)
けやきの自然分布は本州、四国、九州などの温帯から暖帯で、肥沃な谷間などに  好んで生育している。高さは35m、直径2mになる落葉大高木で、幹はふつう通直  である。けやきは年輪が明瞭で辺材と心材の区別もはっきりし、辺材は淡い黄褐色  で心材は黄味がかった褐色から紅褐色である。木理がはっきりしているので老大木では  良い杢が現れ、その模様から如輪杢、玉杢、鶉杢、牡丹杢などと呼ばれ珍重され  ている。大木で年輪幅の狭いものは狂いが少なく、水湿に対する保存性も高く、材  の肌目は粗いが磨くと良い光沢が出る。また強度が大きく耐久性があることから、優  れた木材として古くから建築構造材、装飾用材など広い分野で使われている。   けやきは銘木としては、杉、桧などとともに代表的な樹種であるが、生産されたけやき  の全てが銘木になるわけではなく、その中でもとりわけ優良な材質を持つものが銘木  として取り扱われる。銘木としてのけやき取引では、立ち木を見てその目離れ、あて、  腐れなどの欠点を見抜き、どのような材が採材できるかという長年の経験によって得た  ”目利き”がもっとも大事なことであり、造材(製材)のやり方いかんでは同じけやきで  あってもその価値が大きく左右される。
玉杢
神代杉
神代杉とは、水土中に埋もれて多くの年数を経た杉材で、往古、火山灰中に埋没  したものである。工芸品の製作、高級日本建築の装飾に用いられる。  神代杉の産地として有名なのは静岡県中伊豆町である。江戸時代中期ごろから  生産が始まったが、今ではまったく姿を消している。戦後、秋田県の鳥海山麓から大  量に発掘され、また富士山麓・岐阜県高山地方・富山県でも産出したといわれる。  神代杉の埋没している箇所は地上からまったくわからないため、掘り当てるかどうかは  まったくの幸運による。中伊豆町の場合は、深い土中に立ったまま埋没されており、  鳥海山麓の場合は、土中に倒れた材が深く埋まっていたようである。このように生産地  がはなはだ局限されているうえ、再生産することができないため希少価値が高い。今後  の生産は新しい埋蔵地が発見される偶然性に頼るしかない。
・
トップページへ